好きスキ大好き愛してるっ 2
「美奈ちゃーん? 美奈ー? 美奈さーん?」
んー……うにゃ。パパの声が聞こえる。声だけで気持ちいい。体がふんわりした感じになれちゃう。
「こんなところで寝てちゃダメでしょ」
こんなとこって、え?
瞬き三回。だって目の前に、逢いたくて逢いたくて逢いたくて、堪らなかった人がいるんだもん。
「パパ?」
あーん。本物だぁ。パパが目の前で笑ってるの。クツも脱がないでしゃがみこんで、玄関のギリギリでいつの間にか寝てた私を見つめてる。うれしくて、両手をのばしてしがみつく。
「おかえりな……っん、ふぁ」
全部言う前に、唇が唇で塞がれちゃう。すんなりと入ってきた舌が、私の舌を絡め取る。言葉もなにもかも、全部奪い取るように。
「ッはん。あ……ぁん」
いつの間にか眠っちゃう前に聞こえてた時計の音。そんな規則正しくて寂しい音はもう何にも聞こえない。逢えなかった時間の分を取り戻したくて、必死でパパのキスに応える。
どのくらいしてただろう。口の周りも、あごも、喉まであふれてはみ出したお互いの唾液でべたべたになるまで何度も何度も角度を変えてキスをする。
「んふ」
柔らかいパパの唇が離れていく。
「ただいま」
さっきまでもっと近くで……キスしてた唇が動く。いっぱいキスしたあとで見詰め合うのって、すごくどきどきして恥ずかしいのに、パパは平気みたい。じーって、私のことみながら笑って言うの。
「おか、えりなさい」
だからなんとなく、視線、逸らしちゃう。パパのこと見てたい気持ちと、恥ずかしい気持ちがぶつかって、一層どきどきしちゃうから、どうしても目を逸らしちゃう。
「美ー奈ー?」
パパはそれがおもしろいらしくて、私が逸らしたほうに首を曲げて、私の顔を覗き込む。
「ハイ。これは美奈のお土産」
「わぁありがとう」
「由奈は?」
私に紙袋をひとつ渡して、パパがクツを脱いで家にあがる。
「帰っちゃったの。一緒に待ってようって言ったのに」
「しょうがない子だねぇ……ま、いいか。腐るもんでもないし、また来たときで」
玄関から居間まで、パパと手を繋いで……って言うか、パパの腕にぶら下がりながら移動。
「あのね、ご飯、がんばって作ったのよ。パパが好きなものばっかり!」
本当はパパや由奈ちゃんのほうが料理が上手だけど、私だってたまにはやるんだからね。
「だから今日はそんな格好してるの?」
「そう。似合ってる?」
メイドさんみたいなふわふわのふりふりの真っ白ドレスエプロン。実用性無視のデザインだけどかわいいでしょう? 料理してるときは汚さないようにしてなかったのはナイショだけど。その下も、ちょっと合わせてシャツブラウスとロングスカート。
エプロンをつまんでくるんって回った私に、背広を脱いでネクタイを外したパパが笑う。
「うん。どこの若奥さんかと思ったよ」
いやーん。若奥さんみたい!? ほんとに?
「ご飯いれてくるね」
いそいそ浮かれながらキッチンに行こうとした私の足が、本当にふわりって浮く。
「え?」
「飯もいいけど、俺はこっちのほうがいいな」
後から、パパの腕が腰に回って、抱きしめられた。
2002.8.15=up. |